【業種別】DXの実践事例10選!現状や導入方法も合わせてご紹介します
近年ビジネスシーンでも大きく注目されている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という概念は、組織や業務のあり方を大きく変えるものとして重視されています。
今回は、昨日に続き「DX」をテーマに、DXの実践事例について業界の現状や具体的な導入方法にも触れて解説します。
クリスマスまでの期間に、窓を毎日ひとつずつ開けていく「アドベントカレンダー」。
今年はそんなアドベントカレンダーにちなみ、株式会社トライエッティングの公式noteにて、「人工知能」、「機械学習」、「働き方」などをテーマとする様々な記事を、クリスマスまでの平日毎日投稿します。
DXとは「デジタル技術によるビジネスの変革」
経済産業省の定義(※)によると、DXとは”企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”であるとされています。
※引用
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf
つまりデータやデジタル技術といったITを用い、ビジネスを企業内外において変革し、より良いものにしていくための概念です。DXに取り組むことはメリットが大きく、逆に取り組まなければ多大な損失が発生する可能性も高いとも言われています。
今DXが注目されている理由
1.デジタル化による業界の変化
今、あらゆる業界で従来のビジネスモデルが破壊され、刷新されています。例えば、配車アプリのUberは、DXによって既存のビジネスモデルを変革した代表例です。従来のタクシー会社は、「車と運転手」を保有して「移動する」サービスを提供していました。しかしUberは、運転して収入を得たいドライバーと移動したい顧客とをIT技術でマッチングして手数料を得るビジネスモデルで新規参入し、大きく成功しました。これによりタクシー会社は、顧客の利便性の面でも収益の面でも新たなビジネスモデルを考えなければ生き残りが危うくなる状況に陥りました。このように、各企業が生き残るためには根本的な変革が求められています。
2.スマートフォンの普及
また、スマートフォンの普及により消費者の購買行動が大きく変化したことも大きな要因の一つです。今や日常生活に無くてはならない存在となったスマートフォンですが、この状況は消費者が商品を購入するときの情報収集・口コミ等もすべてインターネット上で行われるということです。そのため、ほぼ全ての行動がスマホに紐づけられ、大量のデータをクラウドへ送信することで、さまざまな用途に利用されるようになっています。このような消費行動の変化に対応するためにも、ビジネスのDX化が求められています。
3.テレワークの需要の高まり
新型コロナウイルス感染症防止対策としてテレワークを推進する動きが広がっています。その動きには、コスト削減や効率化といったほかにデータが取得・活用しやすくなるメリットがあります。そのために、業務プロセスの見直しだけでなくデータを一元管理するシステムの構築までもデジタル化する、DXの導入を進めていく必要があります。
DXの事例を業界別に解説
1.IT・インターネット業:入社手続きの時間を1/2に削減
デジタルマーケティング事業を展開する株式会社キュービックは、株式会社SmartHRの展開するSmartHRを導入しています。導入の目的は業務効率化と情報の正確性を保つことでしたが、実際に入社手続きにかかる時間が1/2に削減されるなど、大きな効果が出ているようです。
2.製造業:顧客管理システムをデジタル化
トヨタ自動車では、「次期営業活動支援システム」を構築しました。これは、元々あった基幹システムとクラウド型CRM(顧客管理システム)の「Salesforce」を連携させ、顧客情報を一元化しました。これにより、クラウドが持つ拡張性や俊敏性といった特徴を最大限に活用し、他システムとクラウドのデータを区別なく利用することで、販売会社側の営業活動を効率化させるのがねらいです。
3.飲食・食品業:マーケティングシステムを改善
こちらも「Salesforce」が関わる一例。江崎グリコ株式会社では、幅広い層の方に認知のある製品ラインナップを活かし、企業のブランディングや販売促進の支援をしています。その際の営業活動に「Salesforce」を取り入れ、営業の名刺情報のリスト化だけでは限界があった商談化率を向上させました。
4.建設業:土砂の積み込みを自動化
株式会社大林組、NEC、大裕株式会社は、建設機械の自律化第一弾として、土砂の積み込み作業を自動化するバックホウ自律運転システムを共同開発しました。熟練技能が必要で自律化が困難だった土砂の積み込み作業を、遠隔操縦装置・熟練技能者による操縦のノウハウ・AI技術の3つを活用し、掘削や積み込み時の機械の動き方を高精度に再現することで自律化を果たしました。DX化の難しい建設業の工事工程を自律化できるという、注目の集まる事例の一つだと言えます。
5.金融業:顔認証による次世代ATM
フィンテックというワードでも注目されるように、IT×金融の動きは近年非常に注目されています。セブン銀行はNECとともに、世界No.1の認証精度を有する顔認証技術を搭載した次世代ATMを開発し、入れ替えを開始しました。生体認証やAI・IoTなどの技術の進展を踏まえ、次世代ATMでは、顔認証による本人確認やQRコード決済に対応するだけでなく、AIによる現金の需要予測の高度化や各種部品の故障予測を用いて、さらなる運営の効率化を図ることができます。
6.物流業:Uberによるタクシーのデジタル化
先ほど解説したように、配車アプリのUberは、DXによって既存のビジネスモデルを刷新した代表例です。従来のタクシー会社は、「車と運転手」を保有して「移動する」サービスを提供していました。しかしUberは、運転して収入を得たいドライバーと移動したい顧客とをIT技術でマッチングして手数料を得るビジネスモデルで新規参入し、大きく成功しました。
7.行政:名刺の電子管理ツールを導入
北九州市役所では、名刺管理に膨大な工数・人脈が有効活用されない・部署間での情報共有がないといった問題を抱えていました。そのため、名刺や関連情報の管理・共有にまつわる業務の効率化・人脈に関する情報共有による部署間の横の連携・地域の企業に対してモデルケースとなるような生産性向上策の実践を目的に、SansanというICTツールを導入しました。このように、行政現場でもDXの流れを受けた組織運用がなされています。
8.人材業:人材提携業務を改善
株式会社フルキャストホールディングスは、人材派遣や人材紹介サービスを展開する大手人材サービス企業で、情報システム部にてRPAツールを導入しました。これにより、最高月300時間分のスタッフのリソースを削減し単純作業以外の業務に役立てることができたとのことです。
9.教育業:2,800時間分のITシステム運用業務を削減
ベネッセグループ各社の情報システムの運用・保守を担う株式会社ベネッセインフォシェルは、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」を採用し、2800時間分のITシステム運用業務の削減に成功しました。
10.不動産:年間2万5,700時間の工数削減
株式会社オープンハウスは、AI・RPA技術の研究開発を実施し、ディープラーニングや遺伝的アルゴリズムなどの高度な技術を活用することで、従来は人が手作業で行わざるを得なかった不動産の業務を自動化し、既に10テーマの実現により年間25,700時間の工数削減に成功。一部テーマにて特許出願中となったと発表しています。このように不動産業界でも、最先端ITによる不動産業務の自動化を通じて、 働き方改革の推進、不動産業界のイノベーション事例の創出が起こっています。
懸念される「2025年の崖」とは?
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」(※)では、既存のシステムがブラックボックス化し、そのまま残ってしまった場合に想定されるリスクを「2025年の崖」と呼んでいます。「2025年の崖」は、既存のシステムを改修せずに放置した場合に、今の時代に必要とされるデータ活用に障害が発生するリスクを指しています。試算では、データ損失やシステムダウン等のシステム障害によるトラブルが起こった場合の経済損失は、2025年以降で年間最大12兆円にのぼる可能性があるとされています。2025年の崖に対策を打たないと、日本の多くの企業がビジネスチャンスを逃すだけでなく、多額の経済損失を生む恐れがあります。ここでは、これを解決するための方策について解説していきます。
※引用
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
1.人材の不足
企業においては、ITエンジニアの確保およびシステム構築について理解があるIT人材の確保が課題です。AIなどのデジタル技術やデータ分析スキルを持ったIT人材や、組織全体を俯瞰して自社に必要なシステムの将来像を描くことができる人材の育成・確保は急務です。さらに、今後老朽化したシステムを運用・保守できる人材の枯渇も大きな問題です。老朽化したシステムの保守に足を取られ、最新のIT技術を学んだ人材を活用できない恐れがあります。
2.経営陣の理解を得にくい
昨今のDX化の流れを受け、デジタルトランスフォーメーションの必要性について理解している企業経営陣は多いものの、老朽化した既存のシステムを刷新するにはまだメリットが見えづらく、社内の経営陣から同意を得ることが難しい状況にあります。経営陣の理解を欠いては大きな変革に取り組みにくくなるため、いかに社長を始めとしたトップにその必要性を理解してもらうかが重要です。
3.既存システムが古くなっている
過去の技術基盤によって開発された既存のITシステムが、老朽化してブラックボックス化したものを、レガシーシステムと呼びます。レガシーシステムは、データの一元化を阻害する大きな要因の1つで、柔軟にシステムを組み替えることが難しくなります。さらにレガシーシステムを保守するための人材を確保することも困難になるため、通常よりも運用コストがかかります。経済産業省のレポートによると、実際に日本企業のIT関連費用の8割は既存事業の維持・運営に割り当てられ、戦略的IT投資への予算が縮小しているとされています。
DXの導入方法を分かりやすく解説
ここまでDXの概要や導入事例について説明してきました。ここからは、実際に営業へどのようにDXを導入すべきなのか、その方法について段階別で解説していきます。
1.ツールのデジタル化
Web上のアプリやクラウドサービスなどを積極的に導入していきます。さまざまなツールをデジタルに置き換えて、データを蓄積していきます。
2.社内システムの効率化
デジタル化によって蓄積したデータを部門ごとに活用します。「IT革命」はこの段階に至るまでの変化をもたらしました。日本では多くの企業が現在この段階にあり、各企業が施策実施に日々のさまざまなデータを活用しています。
3.データ活用のための基盤づくり
部門内だけでデータの共通化を図るだけでなく、全社的にデータを活用するための基盤を構築していきます。全社的な共通のKPI(評価項目)を設定し、仮説を立て、施策を実施し、データで検証するというサイクルを回していきます。
4.運用体制を確立
ここまで構築してきた基盤を活用して、効率的にデータを運用する組織を作る必要があります。目的は、組織をしっかりと固め、運用体制を確立し、業務フローを明確化することです。
5.事業計画の改善
最後に、事業活動そのものにイノベーションを起こす事業計画への反映が必要です。これはDXの最終段階で、目的は蓄積されたデータから事業計画をブラッシュアップしていくことです。データなどのデジタル資産は事業基盤となり、その活用が競争力の向上につながります。いち早くDXに取り組んだ先駆的な企業でも、この段階に到達している企業は少ないのが現状です。今後はこの段階を目指し、さまざまな企業がDXを推進していくでしょう。
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